●人は、自分が見たいと思うものしか見ようとしない――ユリウス・カエサル
●為政者たるものは憎まれることはあっても、軽蔑されることだけはあってはならない。(塩野七生)
●自分に当てはめられない基準を他人に当てはめるべきではない
――ノーム・チョムスキー
●さまざまな知識人、文化人、政党やメディアは一般の人々よりも右よりな立場を取る――ノーム・チョムスキー
●考えろ、考えろ、考えろ!――ジョン・マクレーン
この事情聴取は捜査を進める海上保安庁に無断で行われたものであり、今、このことがいちばん問題になっているはずだ。
ところが、27日22時に配信された産経新聞には「航海長聴取は問題なのか」という記事が載っていた。
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事情聴取を行ったことを)一部のメディアや政治家が問題視している。だが、組織、とりわけ軍事組織が、早い段階で状況把握することは鉄則である。今後、事故後の対応をめぐり、一方では「情報公開の遅れ」を批判されている防衛省・自衛隊が、いかなる初動態勢を整備すべきなのか、二律背反の宿題を突きつけられた格好だ。(野口裕之)
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この野口という記者は続けて書いている。
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医療事故でも、警察当局の捜査とは別に、病院側が担当の医師・看護師らに事情を聴く。隠蔽(いんぺい)するための「口封じ」を目的とした悪質な場合もあるだろうが、通常は組織としての対応・対策を決定するために行われる。例えば、新聞記者が交通事故を起こせば、新聞社のしかるべき幹部が、本人に状況を確認しようと努力するはずだ。
航海長への聴取が問題となることは、日本が「普通の国」でないことに起因する。実はこちらの方が格段に深刻だ。海上事故に関して、自衛隊には裁判権が与えられておらず、とりわけ民間との事故では事実上、海保に捜査権を委ねることが慣例化しているからだ。
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どうやら、産経新聞では記者がクルマで人をはねた場合、その人の安否を気遣い救急や警察に連絡するよりも、まず上司に伺いを立てる規則になっているらしい。
この記事では医療事故のケースを例に挙げているが、重大な医療ミスが起きたとき、まさに捜査の手が入る前に担当医師、看護師らが上司と相談した挙げ句、カルテの改竄などが行われていた事件がいくつもあった。
そのことを産経の野口という記者はどう見ているのだろうか。
今回の防衛省と石破茂がとった行動は、紛れもなく事実を隠蔽するための口裏合わせに使われたのであり、だからこそ、航海長を呼び寄せるときに「怪我人を搬送するために付き添わせた。それがたまたま航海長だった」などと白々しいウソをついているのである。

そしてウソの段取りをした結果、罪もない漁民を海中に放り出したまま、当の事故を起こした責任者は一向に顔を現さず、一週間も経った昨日になってようやく謝罪会見を行った。
席上に現れた艦長の舩戸健は神妙な面持ちながらも、いかにも歯切れの悪い口調で「全責任は自分にある」と認めた。そして指揮官でありながら「あの海域で、漁船が多いことを認識していなかった」と信じられないようなことを認めた。
その顔つきは、艦上で絶対の権力を握る指揮官のものではなく、防衛省の庇護のなかからいやいや顔を出してきたボクちゃんのように情けなく、肝心なことについては「捜査中なので言えない」と言い通した。
これは、「事実を隠蔽するための口封じを目的とした事情聴取」があったためなのではないのか。
産経新聞では重大事故を起こした場合、上司が事後処理をする規則になっているのかもしれないが、社会では通用しない常識である。
もし、クルマで事故を起こしたなら、まず怪我人を手当てすることと事故現場を保存し、警察を呼んで現場検証に委ねるのが世間での常識だ。
防衛省と産経新聞では、その常識は通用しないらしい。恐ろしいことである。
産経新聞の件の記事では、海上事故に対して自衛隊には裁判権が与えられておらず、民間との事故では海保に捜査権を委ねることが慣例化している。軍が裁判権を持たないことは国際的にも異例であり、そのことが情報錯綜の原因となり情報公開の遅れにつながったのだと結論している。
しかし、国際的な慣例はどうであれ、現在の法令下では捜査権が海保にある以上、自衛隊はそれにしたがわなければならず、それが制約であったとしても、そのなかで最善の努力をするのが筋だろう。
ここにきて防衛省の責任を転嫁し石破茂を擁護し、ボクちゃん艦長の舩戸健までも庇うかのようなスタンスを取る産経新聞とは何者なのだ。
防衛省には事実を改竄し隠蔽してきたという歴史がある。今、それが問題になっているのではないか。
そのことを棚に上げて、「日本が普通の国でない」ことが、航海長聴取問題の原因とは、よくもいったものだ。産経新聞は、ずいぶんいい度胸をしているじゃないか。
感心してしまうよ。呆れながらね。
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