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酒好き、映画好き、本好き、落語好き、バイク好き、そして鬱。 ちょっとばかり辛い日もあるけれど、フンニャロメ~と生きてます。
◎心にとめおく言葉
●人は、自分が見たいと思うものしか見ようとしない――ユリウス・カエサル
●為政者たるものは憎まれることはあっても、軽蔑されることだけはあってはならない。(塩野七生)
●自分に当てはめられない基準を他人に当てはめるべきではない
――ノーム・チョムスキー
●さまざまな知識人、文化人、政党やメディアは一般の人々よりも右よりな立場を取る――ノーム・チョムスキー
●考えろ、考えろ、考えろ!――ジョン・マクレーン

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前回は温暖化懐疑論が掲げる諸点について「市民のための環境学ガイド」の記事を元にまとめたが、もちろんここにはユダヤによる陰謀論などはふくまれていない。こういうバカげた発想は、科学的な検証以前の問題であり、もし真面目に信じている者があるとすれば、よほど頭の中が単純に出来ていると言って間違いないだろう。
こういう手合いの頭の中身はおそらくユダヤの陰謀とフリーメーソンの陰謀で世の中の大半が成り立っているように出来上がっているのではないかと思うが、どんなものだろう。

さて、私が温暖化懐疑論についてまとめておくべきだと思ったのは、7月20日の日経新聞に塩谷喜雄論説委員が「反論まで周回遅れ 温暖化巡る日本社会の不思議」という論説記事で温暖化懐疑論を批判し、話題を呼んだというのが発端だ。これについて東大名誉教授の安井至が「IPCCは温暖化を断言したのか」という記事を「あらたにす」の新聞案内人に寄稿し論考しているが、「市民のための環境学ガイド」は実は安井が運営しているサイトであり、ここでも7月27日付けの記事で「温暖化懐疑論と新聞報道」としてまとめているので、こちらを見ていくことにする。

まず、日経の塩谷原稿は次のように始まる。
「科学的には決着している地球の温暖化について、ここにきて温暖化と二酸化炭素(CO2)の排出は無関係」といった異論・反論が日本の一部雑誌メディアなどを騒がせている」。

ここで問題なのは、「科学的に決着している」のが何を意味するかで、「温暖化と二酸化炭素の排出は無関係」であることが科学的事実であるかといえば、答えはノーであり、これは決着しているといっていい。温室効果ガスを排出すれば温暖化する。
ただし、なんらかの寒冷化のメカニズムのトリガーを引くことによって、寒冷化する可能性は残る。たとえば、グリーンランドの氷が溶けて、それが地球の熱塩循環による熱エネルギーの分配メカニズムを壊すといったことだ。また、気候感度(温室効果ガスの濃度が2倍になると、気温は何度上昇するか)については科学的に決着していない。
さらに、地球の揺らぎは非常に大きいので、人工的な温暖化が地球の温度変化にどれだけの影響をもたらすのかということも分からない。IPCCは、現時点の科学で地球の揺らぎを予測することは不可能なので、これをもとに気温の変動を議論することは出来ない。ゆえに人間活動による人為的な温室効果ガスの排出による温暖化だけを対象にするというスタンスを取っている。

さらに、塩谷原稿は「IPCCは、昨年の第四次報告書で人為的温暖化の進行を「断言」した」と書いており、温暖化懐疑論者の池田信夫などはこの解釈に噛みついている。IPCCの第1ワーキンググループによる第4次報告書の政策決定者のためのサマリー(通称SPM)の原文は以下の通りで、

The understanding of anthropogenic warming and cooling influences on climate has improved since the TAR, leading to very high confidence[7] that the global average net effect of human activities since 1750 has been one of warming, with a radiative forcing of +1.6 [+0.6 to +2.4] W/m2 (see Figure SPM.2).

[7] In this Summary for Policymakers the following levels of confidence have been used to express expert judgements on the correctness of the underlying science: very high confidence represents at least a 9 out of 10 chance of being correct; high confidence represents about an 8 out of 10 chance of being correct.


[7]の注によれば、科学的に最低でも90%確実という表現になっている。
科学的事実に100%確実なものなどはないので、90%確実と書いてあれば「二酸化炭素排出が温暖化と無関係」という意見は間違いと断言した、と解釈してもおかしくない。ただし、温室効果ガスが増えることによって正確に気温が何度上昇するのかといえば、はっきりとは分からないというのが現状である。

このIPCCの説明では放射強制力(radiative forcing)を用いているが、これは少々難しい。

気候感度

一方、気候感度で説明したものが第3ワーキンググループのSPMにあり(上グラフ)、これを見ると、気候感度は3℃ということで中心の黒い線が書かれているが、もしも4.5℃ということになれば、上の赤い線だし、もしも、2℃だということになれば、下の青い線ということになる。青い線程度におさまるのであれば、550ppm程度の温室効果ガス濃度でも大丈夫で、対策を取るのが楽になる。反対に、気候感度が4.5℃ということになると対策を取るのが難しいことになる。(オリジナルのキャプションは以下の通り)

Figure SPM.8: Stabilization scenario categories as reported in Figure SPM.7 (coloured bands) and their relationship to equilibrium global mean temperature change above pre-industrial, using (i) “best estimate” climate sensitivity of 3°C (black line in middle of shaded area), (ii) upper bound of likely range of climate sensitivity of 4.5°C (red line at top of shaded area) (iii) lower bound of likely range of climate sensitivity of 2°C (blue line at bottom of shaded area). Coloured shading shows the concentration bands for stabilization of greenhouse gases in the atmosphere corresponding to the stabilization scenario categories I to VI as indicated in Figure SPM.7. The data are drawn from AR4 WGI, Chapter 10.8.

以上の報告を読んだうえで塩谷原稿は「これまで慎重に科学的な姿勢を貫き、断言を避けてきた組織が、ついに結論を世界に示したのだ」、「どうにも止まらない人類社会の温暖化ガスの排出増に対し、ついに、「断言」という伝家の宝刀を抜いた」と書いているが、これは筆が滑ったと言われても仕方ないだろう。
いずれにしても、まだまだ気候感度については不確実性が高い。今後、その測定も可能になるだろうから、現時点の政策としては、IPCCの言う3℃ぐらいを想定して、対処を始め、そして、徐々に修正をしていくことが重要だというのが安井の主張である。

塩谷はまた、「米ブッシュ政権は、CO2などの温暖化ガスでは地球は温暖化しない、あるいは、温暖化という現象自体が存在しないというキャンペーンを張ってきた。同調する石油資本がスポンサーを務めていた数年前までは勢いがあったが、最近はほとんどそうした異論を米国内でも聞かなくなった」。「理由は二つ。スポンサーが温暖化対策、排出削減の方向に舵を切ったことと、全米アカデミーから、ブッシュ政権が科学者への干渉をたしなめられたからとされる」。と書いているが、安井はブッシュ政権の反論は余りにも稚拙だったから、防衛できなかった、というのが真実に近いと見ている。温暖化そのものを否定するのは、やはり無理があるのだと切り捨てている。

池田信夫ら温暖化懐疑論者が塩谷原稿でもっとも激しく反応したのは次のくだりだ。
「日本でメディアをにぎわしている異論のほとんどは、地球科学とも気象学とも無縁の門外漢の学者の言説である」。
実際、池田自身もエコノミストであり地球科学とも気象学とも無縁なのは明らかなのだが、池田は自らのブログで「当ブログで紹介した科学者のうち、だれが門外漢なのか。IPCCのサマリーさえ読んでいない門外漢は、自分だろう。おまけに経済紙のくせに、京都議定書の費用対効果について論じたNordhausやLomborgの最近の議論さえ知らないで、「周回遅れ」の古くさい温暖化脅威論を振り回しているのは日経新聞のほうである」とこきおろしている。

まるで目くそ鼻くそを笑う類の話で笑うしかないが、安田は現在のような温暖化懐疑論が勢いを得たのは武田邦彦の『偽善エコロジー』がバカ売れしたせいで、この手の本がどんどん出るようになったためだとしている。つまり、ひとつヒットが出ると二匹目、三匹目のドジョウを狙う軽薄なマスコミが今日の温暖化懐疑論ないしは陰謀論を醸成したというわけだ。
安田はさらに日本産業界の問題点も挙げている。現状で利益を上げているのだから、今さら温暖化対策などしたくないという心理。
これらについてはHPを読んでもらいたいが、国際政治が環境問題を中心に大きな流れを作ろうとしているときに、日本はまったくそれに対応できていないという指摘は注目すべきだ。安田は洞爺湖サミットでの福田康夫のリーダーシップをある程度評価しているが、世界経済で覇権を握ってきたアメリカ経済に陰りが見え、かわってEUが環境戦略でアメリカに対抗してきている。

この状況下で、これまでアメリカに依存してきた日本がどのような国際政治的立場を取るのか。
それは科学とはかけ離れたところにある問題なのだが、結局のところ、この重要な時期に適切な舵を切る能力を持つ政治家が日本にいないことがいちばんの問題であり、国際政治の舞台で煮え切らない態度をとるしか道のないトホホな国の代表として、福田康夫は適任であるという見方にはうなずくしかない。

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関連タグ : 日経新聞, 温暖化懐疑論, 陰謀論, IPCC, 偽善エコロジー,

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